先日、患者様からこのようなお悩み相談をいただきました。
1か月前から強い痛みの腰痛と足のしびれを感じて整形外科で診てもらったら、椎間板ヘルニア
と診断されました。その後に治療として腰を引っ張るような牽引治療をしてもらったのですが、
腰は引っ張っても大丈夫なんですか?
また、牽引治療を続けて腰痛に効果があるのでしょうか?
教えてください。よろしくお願いします。
ご質問ありがとうございます。
腰が痛くていままでに整形外科や整骨院に行って、脊椎を引っ張る牽引治療を受けたことがある人って
多いのではないでしょうか?牽引とは引っ張るということです。
牽引治療は骨盤をベルトで固定して機械にセットして牽引するというものです。
しかし、この牽引治療は「効果がない」「腰痛を余計に悪化させてしまう」という噂もよく耳にします。
牽引を行う機械は一昔前から整形外科などではよく使われています。
効果があるのかないのかわからないもので治療することは時間とお金の無駄ですよね。
そこで今回は牽引治療が腰痛に効果があるのか?ということについて、過去のデータや私の意見をもとに
解説していきたいと思います。
牽引治療とは?
牽引治療というと発祥はヒポクラテスという古代ギリシャの医者が、骨折などの治療に用いた
とされています。今から50~60年前には椎間板ヘルニアの治療に使われていました。
圧力がかかり押しつぶされている椎間板を牽引して伸ばすというイメージでしょうか?
牽引を行う機械は古いものではベットの仰向けに寝た状態で牽引するものでしたが、
最新の機械では椅子に座った状態からその椅子がリクライニングして仰向けになって牽引するという
ものに進化しています。
牽引治療は筋肉を傷つける可能性があると指摘されていましたが、現在では筋肉を傷めることなく
牽引できるという機械があるようです。
私が以前に勤務していた整骨院では最新の牽引装置が置いてありましたが、その機械は
間歇牽引といい、腰を牽引する時間と休止時間が交互にあるものでした。
腰を牽引する力も1キロ単位で設定できるもので、患者さんの体重の3分の1を目安に調整していました。
牽引治療の禁忌
牽引治療はどんな腰痛にも使えるものではありません。
次のような腰痛の場合には使用が禁止されています。
・ぎっくり腰などの急性腰痛
・悪性腫瘍の骨転移がみられるとき
・脊椎分離・すべり、骨折を合併している時
・リウマチなどの脊椎の炎症性疾患
このような腰痛には禁忌とされています。
間違って使うと逆効果になってしまいます。
牽引治療は腰痛に効果はあるのか?
脊椎を牽引することで、筋肉や靭帯の伸展効果はあります。
筋肉が伸ばされて血流がよくなるとされています。
しかし、この効果を最大限に出すには、牽引よりもマッサージの方がいいでしょう。
また腰を牽引することによって、椎間板ヘルニアで出ている部分が引っ込むとまでいわれていますが、
そこまでの効果はありません。
こんな時には「牽引は効果がないんじゃないか?」と思ってしまうものだと思います。
そんな時に1つの目安になるのが、過去の論文ではなんと言っているのか、です。
過去の論文でも腰痛に牽引が効果があるという報告はありませんでした。
日本整形外科学会の【腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン】にも腰痛に牽引治療が効果はあるのか
明確ではないと書いてあります。
しかし坐骨神経痛を伴う腰痛には効果がみられることもあるとも書いてありました。
人により個人差がありそうですね。
なので、治療の中の1つの選択肢としてはいいと思います。
牽引治療の効果ははっきりとした根拠がないということになりますが、効く人もいる。
治療の中の選択肢の1つとして牽引治療を選ばれて、それで効果が出たと感じる人もいるようです。
牽引治療は腰痛に効果があるのか? まとめ
牽引治療が腰痛に効果があるのか?について解説してきました。
論文には牽引治療が腰痛に効果があるという根拠はないとされていますが、人間の身体は奥が深いです。
まだまだ現代の医学では解明されていないことがたくさんあります。
ですので、論文で根拠がないといわれていても効果が出てしまう人もいるのです。
私の考えとしては、牽引治療で効果がみられるような腰痛の場合は、その他の徒手療法ではもっと
効果がみられるんじゃないかなと思います。
治療って機械に任せるより、人の手を当てて行う方が絶対的に治りが早いような気がするんですよね。
機械で治るなら人はいらないわけで、機械だけにすればいいのですから。
もちろん力の限り揉んだりするという意味ではありません。
どの治療を選ぶかは患者さんの自由ですが、この記事を読んで今腰痛治療に迷われている人の
参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。